その猿は全身が緑の毛で覆われていて、前髪の一部は黄色に染められていた。
話を聞くと、その猿はロッキー山脈にある小さな寺院で
30年に渡る修行を終えたところで、来月にも故郷であるインドに
戻るということだった。
「バナナ、たべる?」
猿は片手にバナナを一房持っていて、それを俺に勧めてきた。
この奇妙な猿に対して俺は興味を持ったので、
そのバナナをもらって食べることにした。
だが、バナナを食いながら20分も話していると、
強烈な睡魔が襲ってきた。
それは自然に起こる睡魔とは別の、強制的な眠りを暗示させるものだった。
「バナナに、何か入れた?」
情けない響きだったが、俺はそれ以外に発する言葉がみつからなかった。
猿は何も答えず、自身もバナナを食べ続けていた。
しかし俺が眠りに落ちる直前、猿はこう答えた。
「君は逃れることはできないと思うよ。」
眠りから覚めると、俺はどこかの部屋のベッドの上に横たわっていた。
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