12.29.2012

最後の最後で健と更新がかぶったし、内容も若干かぶった、そんな年末


年の瀬も押し迫った本日、我が家のご近所に引っ越してきた僕らのドラマー、健の新居で片付けの合間にこれを書いています。

今年はなんだか中々思うように事が運ばない年となりました。
一年間を通じて、自分のやるべき事、自分達のやるべき事を模索して試行錯誤を繰り返してきました。

その過程で迷惑をかけた人もいるかもしれないし、傷つけた人もいるかもしれない。しかも、今年ももう終わろうとする今になっても、解決できておらず来年への課題として残っている事が山積しています。

そんな風に全般的には冴えない一年でしたが、素晴らしいミュージシャンとの出会いがあった事は、大きな収穫であったと言えると思います。

定期的に渋谷で行っているicon girl pistolsの企画、LJRRには、初回からいつも素敵なミュージシャン達が出演してくれています。
その中でも特に本物の音楽家であったり、本物のアーティストと呼べるような人達二組が、今年のイベントに快く出演してくれました。

先ず、二月に出演してくれた、Callum's Whisky Tales。ギターボーカルとドラムスの2人組で、Ian Curtisにも通じる深い響きの声と呪術的なギターのリフレイン、それを完璧にコントロールされたドラムスが支え、静と動の爆発的なエモーションを生み出すグループです。

彼らは3月末まで六本木に開設されていたBlue Man Theatre Tokyoでパフォーマンスを行う現役バリバリのBlue Man Groupのメンバーという表の(?)顔をもっており、忙しいスケジュールの合間をぬって出演してくれたのでした。

Blue Manのブルーに染まっていないパフォーマンスが見れるとあってか、会場は超満員になってしまい、お客さん達には少し窮屈な思いをさせてしまいましたが、さすがに毎晩世界レベルのパフォーマーとして人々を魅了している彼らの演奏は、一瞬聴いただけで本物と感じさせる気品のあるものでした。

http://m.reverbnation.com/artist/callumswhiskytales

そして、もう一組はつい先日、12月23日のイベントに出演してくれたミスターSamm Bennett。

http://www.polarityrecords.com/

http://ja.m.wikipedia.org/wiki/サム・ベネット

1957年生まれの音楽家で、若い時期からパーカッションを中心とした実験的な音楽を追求してきたそうです。

現在の彼のスタイルは(といっても日によってスタイルを無限に変化させるので、ごく最近見せてもらったスタイルは、という方が正しいかもしれません)、通奏低音を背景に、古びたパーカッションとエレクトリックサウンドをリアルタイムで操り、その上にブルースを基調としたポエトリーリーディング(シャウティング)が加わるという、非常に原始的なもの。

しかし、そのビートや伴奏に組み込まれるエレクトリックな要素は、まさに現代的なミニマルミュージックそのものであり、まるで40年代のアメリカンミュージシャンがエレクトロニカを通じてブルースを語るような、old&newの世界観を体現するものとなっています。

彼の演奏をみていると、打楽器と声だけでこれほどのバリエーションとストーリーを生み出せるものかと非常に驚かされます。

僕の大好きなTom Waitsに通じるストーリーテラーとしての才能、現在もJim O'Rourkeや菊池成孔と活動を行う即興奏者としての実力、そして圧倒的な知識に裏付けられた音楽への愛情、その全てが彼の特別な世界を作り出しているのでした。

そして、もう一つ特筆すべきは、彼の温厚な性格。誰にでも愛される彼の人柄は、本物の才能をもった人間に備わったウィットとユーモアに富み、人生への好奇心、人間への愛に溢れています。

演奏を始めればすぐにその場の空気を支配してしまうような存在感、僕たちのイベントに出てもらうのは申し訳ないと思わせるくらいの風格。残念ながら彼に出演してもらったイベントはそれほど多くの人に集まってもらう事はできませんでしたが、彼のパフォーマンスを観た誰もが、本物のアーティストだと驚嘆した、素晴らしい演奏をみせていただきました。

ここで紹介させてもらった二組はいずれも、打楽器のサウンドにこだわり抜き、マイキングも含めて、パーカッションがどのように響くかに徹底的に意識的である事が共通点でした。(CWTのドラマーEricも、Sammもいずれも自分のドラムセットを全て持ってくるところも、音に拘る彼らなら当然ではありますが共通しています)

打楽器は、人類が自らの歌と共に最初に獲得した「楽器」であると言われていますが、プリミティブであるからこそ、いつの時代でも人々の心に直接的に届く楽器たり得るのだと思います。

2012年の彼らとの出会いは、今になって振り返れば、僕に打楽器のサウンド、プリミティブなリズム音楽の魅力を再発見させてくれる特別な出会いになったのではないかと、都合よく感じているのです。

勿論彼らから学ぶことはそれだけにとどまらず、パフォーマーとして何が一番大事かという点についても、考えさせられました。

ここについては今後個人的にもグループとしても追求していかなければならないところですが、そういった課題や音楽的な可能性について、前向きに再考できる刺激を得られた事が、2012年のなによりの収穫であったと言えるでしょう。

打楽器の音楽というようなことについては、また機会があれば何か書きたいと思っています。来年の僕らの目指すところのキーポイントになってくるとも思っていますので。

なにはともあれ、一年間応援してくださった皆さん、ありがとうございました。

来年こそは皆さんに刺激を与えられるような活動を行っていきたいと思っていますので、このブログともども、icon girl pistolsをご贔屓下さいますようよろしくお願いいたします。

サンキューサンキュー!

ss

2012年に出会った素敵な音楽家/よく聴いたお気に入りの音楽

今年新しく聴いた音楽を振り返ってみようと思った。
けど気づいたら最近の新しいバンドってホント聴いてない。
この間うちのssに教えてもらったJake Bugg君が最近気になってはいるけど。

今年出てきたバンドではないけど新しく聴いてたのはCaravan PalaceとWarpaint。
Caravan Palaceはフランスのエレクトロスウィングのバンドで、ドラムは打ち込みだけどすんごいカッコイイ。日本でライブやってくれないかなぁ。絶対に楽しく踊れる! フランスに見に行ってもいいな。
Warpaintはアメリカの女の子4人組で、John Fruscianteがプロデュースしたりで話題になってたけど、音がね、素晴らしい。美しくて、心地よくて。それとベースの子のリズムの取り方がすごく良い。

あと新しく聴いたわけではないけど、久しぶりにDr.FeelgoodとThe JamとFlogging MollyとRolling Stonesをよく聴いたらハマりました。昔はそんなにピンと来なかったけど、今聴くとすごいカッコイイ。

それと今年は人のライブにはあまり行けなかったけど、Zeppで見たMorrisseyと、フジロックで見た井上陽水、Elvis Costello、Jack Whiteは凄く良かったなぁー。

けどJack Whiteは女の子バンドで来てて、男バンドのDaru Jonesのドラムが超絶にカッコイイのでそっちを出来れば生で見たかったなぁ。普段は歌い手とかフロントマンばかり好きになって、ドラマーはあまり他の人を見てても興味が湧かないのだけれど、Daru Jonesは衝撃的で今年一年すごく影響を受けました。あとドラマーで言えばRingo Starrの偉大さを痛感した一年でもあった。前から好きではあったけど、本当の凄さをようやく理解してきた。気がする。もちろんBeatlesも良いけど、JohnのソロアルバムのPlastic Ono BandでのRingoのドラムがすっごくイイ感じ。

それと最近出会った、Samm Bennettさんも本当に最高のドラムを叩くし、タイコと歌だけで創る世界というか空気が本当に凄い。そんな人が同じ現代の東京で活動してることはとても幸運だし、来年もぜひ仲良くさせていただきたい。学ぶことが多いし、ドラムや音楽の話が出来て楽しい。Thank you so much!!

あと新宿でイベントやってるDJの長嶋さんも本当に素敵な人でした。今年始めたTOO MANY SHOES!!にも出て貰いましたが、本当に選曲が最高で、しかも半分くらいは知らない音楽で、色々お勧めの音楽を教えてもらいたい。
というかSamm Bennettさんと長嶋さんには毎回IGPのイベントにはレギュラーで出演して欲しい!

何か今年はIGPとしては中々上手くいかない年でしたが、音楽を本当に好きな人に沢山出会うことができたし、自分が音楽が本当に好きだということを強く実感出来た一年でした。

2013年はIGPとしてたくさんの素晴らしい音楽と素敵な空間や時間をたくさんの人に届けられればいいな。

それでは皆さん、良いお年を。




P.S. 本日三鷹台に引っ越しました。井の頭線とか中央線とか近辺にお住まいの方々、これから宜しくお願いします。
何か楽しいことしましょう。


12.18.2012

ボブディラン「白痴の風」(と安倍晋三「国防軍」)にみる言語解釈の積極的なススメ

"I kissed goodbye the the howling beast on the borderline which separated you from me"
こんなラインが、Bob Dylanの1975年のアルバム「Blood On The Tracks」の中の「Idiot Wind」という曲にあります。

手元にある片桐ユズル氏の訳詞によると、この一節は「おれはキスをする ほえる動物それはきみとおれを分ける国境線上にある」となっています。

言語が文化を作ったのか、文化の差異が言語の成り立ちを変えていったのか、専門家ではないのでそれは分かりませんが、少なくとも言語はそれを用いる人々の文化、精神性を如実に反映するものであることは事実です。

そのために、異言語間の完全な翻訳ということは有り得ない、なぜなら異なる二言語間には異なる二つの文化という大きな隔たりがあり、その精神性を補完する適切な「記号」を持たないだけでなく、その精神性自体を持たない場合があり得るからです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/シニフィアンとシニフィエ

よく言われる例としては、日本語の「ごちそうさま」に該当する英語は無い、というもの。これは、食事の後に言うべき英語が無いということでは勿論無く、「ごちそうさま」という精神性が英語圏の文化には無いという事だそうです。

Anyway。

ある言語を他言語に翻訳するということは、このように単語一つをとっても非常に難しいことであり、その上、詩などの芸術表現ともなれば、正確な置き換えは不可能といえるでしょう。

こうして、冒頭のラインに対する前述の訳詞は英語詩の一つの美しい解釈であることを前提として話を進めたいと思います。

僕が冒頭のDlyanの一節を読んで気になったのは、"borderline"という言葉の捉え方です。
辞書を引けば直ぐに出てくる日本語は勿論、「国境線」「境界線」という単語。では、この訳において「国境線」を「境界線」に置き換えて考えてみるとどうなるでしょうか。

「おれはキスをする ほえる動物それはきみとおれを分ける国境線上にある」

「おれはキスをする ほえる動物それはきみとおれを分ける境界線上にある」

この二つの訳文、異なる部分は漢字二文字分しかありません。しかし、この二つの文章から受け取るイメージはかなり異なるものではないでしょうか。

上の文章では、広大な褐色の大地に暗黙の内に人間によって引かれた、領土を分かつ線があり、その線上をコヨーテのような動物が一匹無愛想に地面に視線を落として歩いている。Dylanの示唆する「おれ」と「きみ」は別々の国からやってきた人間で、お互いの相入れなさを、動物的な叫びでしか表現できないような、そんなイメージが広がらないでしょうか。

しかし、下の文章となると少し様子は変わってきます。
まず、「境界線」という日本語には、国と国の領土を分ける線というイメージは殆どありません。そこにあるのは、もっと単純にある物とある物を分かつ線という感覚。もっと汎用性の高い言葉です。
「きみとおれを分ける境界線」と読んだ日本人は、おそらく殆ど国境線のような物質的ラインではなく、何かしらの精神的な隔たり、もしくはそれを暗喩するための物質的な線を真っ先にイメージするのではないでしょうか。

こうなってくると、ここにはコヨーテの介入する隙間は無くなってきます。コヨーテに代わって「ほえる動物」に導かれるのは、よりパーソナルな語り手自身であったり、もしくは「きみ」と呼ばれる相手のことかもしれない、もしくは二人の間に巣食う拗れた感情のことかもしれない。

いずれにしても、「境界線」と書かれることによって、実際の動物を想像する可能性は低くなるのではないかと思います。

これらは、どちらも非常に有効な詩の言語となっています。前者は一瞬で映像的なイメージを喚起するものであり、後者は精神的なイメージ、二人の人間にこれまで何があったのか、今後どうしていこうとしているのかを想像させるような内容です。勿論、前者についても、イメージの先に「意味」を読み取ろうとした場合には、後者が指し示すような「意味」に結びつくことになるでしょう。しかし、詩は、いつも「意味」を書いているものではないため、受け取り方は本当に個人的なものとなると思います。

ちなみに、片桐ユズル氏の訳詞では、"I kissed goodbye"という部分がおそらく意図的に簡略化されています。僕の個人的な見解では、このフレーズは「おれはキスをする」というよりも、「さよならのキスをする」もっと言ってしまえば、「さよならをする」という意味に近いのではないかと考えています。

このようなことを総合的に考えると、僕が個人的に受け取った、Dylanが一節に込めたイメージは
「おれはさよならのキスをする ほえる動物に きみとおれを分ける境界線上の」
というものでありました。
これは僕自身の詩的美感で解釈したものですが、僕にとってはこのように訳すことで、非常に「意味」的な側面で心を打つ一節となったのです。


勿論、繰り返しになりますが、これはあくまでも僕の個人的な見解であり、真意のほどは、これを書いたDylanのみぞ知るわけですが。

最後にこのライン直後の歌詞について、訳詞に掲載されているものを引用します。

きみにわかるまい
おれのくるしんだ傷もおれが克服した苦痛も
おなじことが君についてもいえるだろうかきみの神聖さとか
きみの種類の愛とか
それがすごくざんねんだ

漢字平仮名の使い方についても訳者の意図があると思いますので、そのまま引用しています。

ちなみに、この作品が収録されている「Blood On The Tracks」というアルバムは、Dylanと妻Saraの破綻してゆく結婚生活がモチーフとなっていると言われています。みなさんはこの詩からどんな事を想像されるでしょうか。

このように、言葉の解釈はとても繊細で、たった一言であっても美しいイメージを作り出すことができたり、あるいは人生の深みに我々を誘ってくれるものであったりと、なんというかそれこそ言葉にできないような、素晴らしい芸術表現になり得ます。

逆に言えば、たった一言であっても人々に恐怖や不快感を与える事ができるのも、また言語の力です。

「日本の、自分たちを守るための軍隊」

"Japan Self-Defense Forces"

確かに英語に直せばこういうことになるのでしょう。
諸外国にこのように説明しているのだからという理由で、それを再度直訳し、「日本国防軍」とするのは、確かに誤りではありません。

しかし、敗戦の悲しみと絶望の中で教訓を学んだ日本国の先人が、その組織に「自衛隊」と名付けたこと、「自衛」という言葉の後に、「軍隊」という言葉から、「軍」の方ではなく、「隊」を採ったという言葉の技の繊細さを、忘れてはいけないと思います。

一つの言葉がどれ程の強い印象を人に与えるか、そういった言葉の力に無頓着な人間は、少なくとも多くの人を導く立場にはあってはならないと僕は思うのです。

ss

12.07.2012

TOO MANY SHOES!!



Saturday December 15th, 2012
Open / Start 23:30, all night party at mona records in Shimokitazawa. 
1000 yen entry. 

Live music from The Watanabes, The Good Things (Mike Hannah & Tosh Aoshima), Icon Girl Pistols and more...

DJ sets from Tomohiko Nagashima (Darling Honey, BEAT WEEKENDERS), EISUKE HOSHI (les qwells, BEAT WEEKENDERS), Goldflash (Goodbye Donuts), SS (Goodbye Donuts)

Timetable coming soon!!


ということで、icon girl pistols主催の深夜イベントがスタートします。
あまり覚えにくい名前は嫌だから、「TOO MANY SHOES!!」です、シンプルに。
沢山の人が訪れるパーティーであって欲しい、沢山の靴が脱ぎ散らかされたような、ごちゃ混ぜでしかもリラックスできるパーティーであって欲しい、そんな気持ちでやっていこうと思います。


いつも渋谷のNobでやっている「Lady Jane's Rambling Revue」のように定期的にやっていくつもりでいます。
気軽な気持ちで出演してくれるDJ達、パフォーマー達、どしどしご連絡ください。

さて、第一回は下北沢モナレコードさんで。
忘年会的なノリで、いつもご一緒している外国人バンドさん達が一堂に会してくれることになりました。
まだまだ出演してくれるバンドがいるかも!

そして、DJもまた強力。今月頭まで月1で開催され、歌舞伎町の夜を英国色に染めていたイベント、From England To MeのレジデントDJ達が出演。スペシャルゲストももしかしたらあるかも!

それからここ何ヶ月かicon girl pistolsで坊主担当をしていたお調子者GOLDFLASHがついに本業のDJとして復活。

そんでもって俺も10年ぶりくらいにDJをします。アナログ盤でしかやったことがないので、これからCDJの使い方も学びます。3時間のロングセットでデトロイトテクノをかけまくります。嘘です。

これだけのラインナップで入場料1000円のみの楽しいオーナイパーリー!
沢山の女子達!男子な君は女子を連れて!!ファッショナブルに着飾って是非遊びに来てくださいね!

ss