7.20.2013

ささやかなギター青年にまつわる滑稽な出来事3

その猿は全身が緑の毛で覆われていて、前髪の一部は黄色に染められていた。

話を聞くと、その猿はロッキー山脈にある小さな寺院で
30年に渡る修行を終えたところで、来月にも故郷であるインドに
戻るということだった。

「バナナ、たべる?」

猿は片手にバナナを一房持っていて、それを俺に勧めてきた。

この奇妙な猿に対して俺は興味を持ったので、
そのバナナをもらって食べることにした。

だが、バナナを食いながら20分も話していると、
強烈な睡魔が襲ってきた。
それは自然に起こる睡魔とは別の、強制的な眠りを暗示させるものだった。

「バナナに、何か入れた?」

情けない響きだったが、俺はそれ以外に発する言葉がみつからなかった。
猿は何も答えず、自身もバナナを食べ続けていた。
しかし俺が眠りに落ちる直前、猿はこう答えた。

「君は逃れることはできないと思うよ。」


眠りから覚めると、俺はどこかの部屋のベッドの上に横たわっていた。

7.01.2013

ささやかなギター青年にまつわる滑稽な出来事2

2013年のはじめ頃、俺は休みの日に街へでかけた。
用事は何かの買い物でもしにいくとか、そんな程度のものだった。

特に大切なものを買うわけでもなかったので、ぼんやり考えごとを
しながら歩いていたら、途中で道に迷ってしまった。
いつも歩いている街で道に迷うこと自体、おかしなことだったが
その時は特段、不思議にも思わなかった。

少し薄暗い路地に入ってしまうと、そこは冬にも関わらず
生暖かい空気が流れていて、風呂敷をひろげて色々な小物を取り扱う
よくある露店がひとつだけ店を出していた。

だがそれを商売にしているはずの、肝心の人間はどこにもいなかった。

俺はその露天に並んでいる品物を10分近く手に取ったりしてながめた。
普段なら見もしない露店をなぜ10分も見ていたのか、
今振り返って考えてもよくわからない。

ただ、なぜかその時は「そうすることが正しいこと」だと思ったのだ。

さらに数分が経過すると、背後から声が聞こえてきた。
「何か気に入ったものでもあるかい?」

男性にしては少し高い声だが、女性にしては低すぎる声だった。


後ろを振り返ると、そこには一頭の猿が二本足で立っていた。